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江戸時代の社会システム江戸時代(近世)は、「士農工商」と呼ばれた身分制度の時代でした。
「封建時代」(中世)には農村に住み田畑も耕していた武士たちは、専業の支配者集団として城下に集められました。
そして農民からは武器が取り上げられ、「兵農分離」が徹底されていきます。
武士と町人(商人・職人)が都市(城下町)に暮らし、農村から送られてくる「年貢米」やその他の産物が都市を中心に消費されました。
また都市においても、繊維、窯業、製紙、醸造などの手工業が栄え、それらの生産物(消費物資)も商品として広く流通しました。
また特に、大坂は「天下の台所」といわれ、換金のために全国から送られる幕府・諸藩の年貢米の流通拠点になります。
農村と都市を結ぶ全国的な消費物資の流通網が築かれ、市場経済=貨幣経済が広範に浸透していきます。
しかしながら近世社会は近代社会と異なり、「生産物」は商品化されていましたが、「生産要素」(土地と労働と資本)は基本的に商品化されていませんでした。
農作物は農村における村落共同体、手工業品は都市における株仲間といった、共同体的な組織のなかで生産活動が行なわれていました。
生産要素は、これらの共同体のなかに抱え込まれた状態で、土地も、資本も、労働も、一般的には商品として流通していません。
特に当時の主要産業である農業に関しては、伝統的な生産方法の維持に主眼が置かれ、田畑永代売買禁止令(一六四三)の下で、厳しい課税(年貢)や賦役が課されて、農村には余剰生産物が一切残らないように管理されていました。
当時の農村の規模は数十戸から一〇〇戸前後で、入会地や用水を共同で管理し、田植えや稲刈りなどの農繁期には、近在で手伝い合って人手をやり繰りし、星根の葺き替えや井戸の掘り直しでは、村総出の共同作業が行なわれました。
このような伝統的な慣習に従った生産共同体としての農村が、近世の社会システムを支えてきたのです。
一方、当時の都市の人口は全体の一割程度で、土地の多くは武家地や寺社に割かれ、町工方に暮らす零細な商人や奉公人、職人などは狭い長屋住まいでした。
しかし全国的な商品流通を担う商業活動に対しては、直接課税のシステムが欠如していたので、一部の商人は急速に富を蓄えて、都市は華やかな消費生活の舞台になっていきました。
平和な時代の土地所有江戸時代の「土地所有」は、町方と農村で大きく異なっていました。
都市における町方の土地は、現在と同じように私有されており、その売買もほぼ自由に行なわれていたようです。
土地の売買に関しては、町役人が連署する「活券」に内容が記載され、それが買主にとっては土地の権利を証明する「権利証」として機能しました。
面子・面目がかかった一大事を「清券に係わる」というのも、ここからきています。
武力による奪い合いが、金銭による売買に取って代わられ、活券が土地の持ち主であることの証明になったのです。
一方農村では、「田畑永代売買禁止令」によって農地の売買は禁止されました。
当時の農村は、領主に対して連帯して年貢を納める連帯責任の共同体でもありました。
代表者である庄屋・名主の下に、土地持ちの「本百姓」、小作人の「水呑百姓」、同居の使用人らが共有地・入会地を含む村のなかで生活していました。
土地と農民は一体のもので、農民が土地を離れる「逃散」は厳禁で、移住も禁止されていました。
農民が農地を離れて「賃仕事(賃労働)」につくことも、基本的には認められていなかったのです。
江戸時代の田畑(農地)は、一応「本百姓」が持っていた(管理していた)のですが、他にもたくさんの利害関係者がいました。
一区画の田んぼでも、本百姓、水春百姓、庄屋、領主、藩主と様々な関係者の権利と義務が絡み合っていたのです。
中世の荘園・公領制とは内容が異なりますが、やファミリー畳を積み重ねたようなので「重畳的な所有関係」といわれています。
明治維新と農地の自由化農地を含む「土地」一般について、近代的な「所有権」が認められるのは明治維新後になります。
その起源は、国(中央政府)からの「地券」の交付による所有者の確定です。
土地所有のルーツを探る明治政府は、当時の租税の中心であった「地租」の収納を確保するために、本百姓を中心に「地券」を交付しました。
そして「田畑永代売買禁止令は解除され、農地の自由な利用「田畑勝手作り」を認める御触れを出します。
「地券」の交付によって確定した農地の所有者は、その土地を自由に「使用、収益及び処分をする権利」(民法第二〇六条、所有権の内容)を得たのです。
並行して都市部の土地についても、幕府や藩から直接与えられた武家地などと、活券に売買が行なわれてきた町方の土地について、それぞれ「市街地土地調査」が実施され、所有者を確定する「地券」が交付されました。
その後、土地の登記制度なども徐々に整っていき、今日とほぼ同じ近代的な土地所有制度ができ上がったのでした。
そして同時に、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」(民法二三九条二)と定められました。
二〇〇八年の住宅・土地統計調査の市部人口割合は九〇パーセントに達していますが、明治初期の市部人口の割合一〇パーセント程度です。
一八八一年の地租改正(三から二・五パーセントに引き下げ)時の統計では、全国の地租総額四九〇〇万円のうち、二〇〇市街地(町)の占める額はわずかに二パーセントで、九八パーセントはその他の「村」でした。
今日と比べると、人口比でも土地の価格でも、農村の比重が圧倒的に高かったことがわ
五、近代国家と土地所有権のルーツ近代国家の政治システム江戸時代末期には、度重なる天災・飢饉などで幕府・諸藩の財政は逼迫していました。
また、欧米の列強諸国が日本に開国を迫る混沌とした時代でした。
欧米における「近代国家」においては、原則として一つ一つの国家が相互に独立した対等の関係にあるとされていました。
「近代国家」は「主権国家」とも呼ばれ、近代世界で国家を形成することができない地域(アジア・アフリカのほとんどの地域)は主権がないものとみなされ、欧米列強諸国の領土=植民地となっていったのです。
近代国家の特徴は、広大な国土に住む一〇〇〇万人単位の国民を、直接一つにまとめるシステムにありました。
そして政治的には、国民を代表する唯一の「政府」が、国の内外で国家権力を独占的に行使するものでした。
江戸時代の日本は、幕藩体制の下で幕府が「天下(全国)」を治めていたのですが、半ば独立した三〇〇余りの「おらが国(藩)」の集まりでした。
日本は、「近代国家」と同じ政治システムに脱皮するか、さもなければ周辺諸国と同様に欧米の「植民地」にされるかの瀬戸際に立たされていたのです。
「戊辰戦争」(一八六八年一月から一八六九年六月)に勝利した明治新政府は、反政府勢力を押さえ込み、一気に「廃藩置県」(一八七一)を断行します。
政府は各藩の債務を肩代わりする代わりに、各藩の年貢を収入として集め、藩主(当時の「知藩事」)の家禄、身分を保障して東京に呼び出しました。
また代わって中央政府から「府知事・県令」(官僚)が派遣され中央集権が確立されていきました。
国民が直接一つの政府に従う、近代国家「大日本帝国」が、天皇を元首とした立憲君主制の国として誕生したのでした(一八八九年、「大日本帝国憲法」発布)。
経済システムと土地所有権明治時代になり、すべての生産物と並んで生産要素も商品化されていきます。
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